佐賀大学 学会発表(ブロイラー)
平成28年度基礎研究等助成事業 受託(2016年)
「乳酸菌発酵飼料添加物を給餌した鶏の小腸の遺伝子発現解析および細菌叢評価」
第10回日本暖地畜産学会(佐賀大会)学会発表(2017年)
「乳酸菌入り資材や腐植酸抽出液を利用して肥育したブロイラーにおける
空腸、回腸、ファブリキウス嚢の遺伝子発現」
養鶏において生産性向上のために育種改良や多羽数飼育がなされているが、その結果としてニワトリの病気に対する抵抗性が弱くなり、抗生物質の使用が必要になっている。
また、食の安全性や薬剤耐性菌の出現の懸念から抗生物質の使用が制限されつつある。そこで注目されているのがプロバイオティクスの考えであり、プロバイオテュクスとは、「宿主に保健効果を示す生きた微生物、またはそれを含む食品」(Salminen)という意味である。これは腸常在性であり、なおかつ宿主の健康に恩恵をもたらす乳酸菌などの微生物を与えることで腸内細菌叢を整え健康の増進を図ることである。
ただし、健康状態がプロバイオティクスによって改善されるメカニズムは不明であるため、免疫に関わる小腸の遺伝子発現を調べることで、プロバイオティックな効果についても検討した。
使用:乳酸菌資材区(バイオすくすく2号)
および腐植酸抽出液1万倍希釈区(イムノメイト)
佐賀大学学会 腸線の厚みが増加 イムノメイトバイオすくすく2号使用
佐賀大学学会発表 腸線 未使用
空腸組織画像
腸腺の層が
縦に約1~2列
腸腺の層が
縦に約7~9列
層が厚い
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これまでの研究成果
1.次世代シーケンシング技術(RNA-Seq)を用い、乳酸菌資材添加飼料を摂食したブロイラーの
小腸・十二指腸の遺伝子発現を網羅的に調査
2.乳酸菌資材添加飼料を摂食したレイヤーの小腸を十二指腸、空腸、回腸に分けて解析
目 的
● ブロイラーでも乳酸菌資材が小腸のより下流域で効果的に働くのか?
● プレバイオティクスはブロイラーにも適用できるのか?
● プレバイオティクスの技術を用いたとき、遺伝子発現や小腸組織は
どのように変化するのか?
● ニワトリの重要な免疫器官・ファブリキウス嚢でもプロバイオティクス、
プレバイオティクスによって遺伝子発現が変化するのか?
(ファブリキウス嚢:造血、抗体産生、B細胞成熟)
■ 乳酸菌資材5%添加区
■ 腐植酸抽出液1万倍希釈区
■ 腐植酸抽出液2万倍希釈区
■ コントロール区
結果② 遺伝子 相対発現量まとめ
調査した遺伝子
● Lysozyme g like 1(LG1) 抗菌タンパク質 汗、涙、鼻水などあらゆる分泌液に存在
● Lymphocyte antigen 6 complex, locus E(LY6E) 白血球抗原 腎臓、肺、脾臓で多く発現
● Interferon-induced protein with tetratricopeptide repeats 5(IFIT5)
RNA結合タンパク質 ウイルスを認識しインターフェロンを誘導する
● 5-hydroxytryptamine(serotonin) receptor 1F, G protein-coupled(HTR1F)
受容体タンパク質 細胞内のシグナル伝達に関与
乳酸菌と腐植酸抽出液1万倍希釈は類似した効果を示す
結果③ HE染色
乳酸菌資材と腐植酸抽出1万倍希釈は類似した変化を示す
腸線の層の厚みが増加
結 論
● 安全性の実証
乳酸菌資材や腐植酸抽出液の摂食はブロイラーの発育に悪影響を与えなかった(結果①)
● 乳酸菌資材5%添加飼料区と腐植酸抽出液1万倍希釈区は類似した効果を示した
①免疫関連遺伝子の発現に影響を与えた(結果②)
②腸線の厚みの増加は消化液分泌量を増加させ栄養の吸収効率を増加させるかもしれない
(結果③)